留まれと散りゆく桜に思えども 散り急ぐさま齢(よわい)の如し
滴塵023
本文
留(とど)まれと散りゆく桜に思えども 散り急ぐさま齢(よわい)の如し
形式 #短歌
カテゴリ #4.無常・生死
ラベル #花 #無常 #風 #春 #人生
キーワード #散り桜 #留まる #時間 #老い #儚さ
要点
散りゆく桜を惜しみ、その早さを人生の老いや時間の速さに重ねる。
現代語訳
留まってほしいと散る桜に思うが、その急ぐ様子は人の老いのようだ。
注釈
留まれと:散らないでほしいと。
散り急ぐさま::急いで散っていく様子。
齢の如し:人生の早さ、老いの比喩。人間の年齢(寿命)のように、止めることができない。
桜:無常の象徴。
解説
自然描写と人生哲理の融合。桜の散る速さは人の生の儚さを象徴し、無常観を深く印象付ける。短歌形式により感情と景が緊密に結びつく表現となっている。
深掘り
滴塵022で願ったことが叶わず、桜は無情にも散っていく現実を描写しています。
桜が散る速度や不可逆性を、「齢(よわい)」という人間の寿命に重ねることで、桜の無常と人生の無常が完全に一致します。桜が散る光景は、もはや外の景色ではなく、己の命の終焉を見ているかのような切実な実感を伴っています。諦念と寂寥感が漂う、哲学的な無常観の歌です。